今回は「世界最強の商人」（オグ・マンディーノ著）のお話を、お伝えしたいと思います。
お話の舞台は、イエスの生まれた時代で、主人公の名はハフィッド。両親を疫病で亡くしてから、大隊商パトロスの養子として育てられ、ラクダ係をしている。
ある日、育ての親であり、大きな商売を行っているパトロスにお願いをする。
「私も商品の売り手になりたい。セールスマンが乗って行くラクダの世話係では将来性がない。セールスマンになれば、富と成功を勝ち取ることができると思う。」
ハフィッドは金持ちの娘であるリーシャに好意を持ち、その父親に認められるくらいの金持ちになりたかった。パトロスはハフィッドに、セールスマンがいかに大変な仕事かを言って聞かせ、どうしてもそうしたいと主張するハフィッドに、語りかける。
「私の息子よ、富はお前の人生の目的ではない。本物の富とは、心の豊かさであって、財布の中身ではない。息子よ、金持ちになることだけを望んではならない。金持ちになるためだけに働いてはならない。その代わりに、幸せになるために努力しなさい。そして、最も重要なことは、心の平和と平安を得るために努力することだ。」
それからハフィッドは、パトロスに指示された通りに、ロバを道連れに一枚の最高級の縫い目のない赤いローブを持ち、最も貧しい人が住んでいるというベツレヘムに向けて出発した。ローブの裏側の縁に、パトロスの商標とトーラ組合の商標があった。
ハフィッドがベツレヘムにやって来てから、もう４日目だが、赤いローブはまだ売れていなかった。商いがうまくいかないことにがっかりし、心の中は辛さでいっぱいだった。しかし、リーシャのことを思い出すと、「明日はこのローブを売ってしまおう。明日は夜が明けたら、すぐに仕事を始めよう。明日はもっといい日になるだろう。」と、心が前向きになった。
それから、宿屋の裏にある洞窟の中に繋いだロバのところへ戻ったが、その洞窟の中には、寒さにふるえて身を寄せ合うあごひげの男と若い女性が座っており、その２人の足元には、普段は家畜の餌が入っている石のくぼみの中で、赤ん坊が眠っていた。
ハフィッドは、幼子の笑っているかのような口元に魅了され、思わず彼の大切な赤いローブを広げて、眠っている赤ん坊を包み込んだ。
ハフィッドが、その洞窟から出た時に、頭上には異常なほど明るい星が輝いていて、本人は気が付かなかったが、ロバを引きながらその星と共にパトロスのところへ歩き始めた。歩いている間中、ハフィッドの頭の中は、洞窟の中の知らない人に大切なローブをただであげてしまったことの後悔の思いと、お金を手にしていないことの苦しみでいっぱいだった。しかし、パトロスは、明るい星を後に従えて現れたハフィッドを叱ることはなく、「お前は失敗なんか一つもしていない」と優しく言った。
この善行で、ハフィッドはパトロスに認められ、成功のための秘訣が書かれた全１０巻の巻物を渡され、その後、その教えを守りながら生きてきた結果、全てはうまくいき大商人になった。
そして３０年が経ち、ハフィッドも歳をとり、それまでに築いてきた財産をお世話になった人達に渡し、その後は巻物を渡す一人の人を静かに待っていた。
以上が、お話の途中までのあらすじです。
その１０巻の巻物の内容と、ハフィッドが巻物を渡した一人の人については、またお伝えしたいと思います。
このお話の中に、人としてこの世に生まれ、どのようにしたら、より良い人生を送ることができるのかということのヒントが書かれていると思います。
パトロスの言葉にあるように「幸せになるために、そして心の平和と平安を得るために努力すること」が大切なのでしょう。
それは、人としてより良く生きる上でも、仕事をする上でも必要なことであり、その結果全てはうまくいくのだと思います。
また、ハフィッドの善行も学ぶところがあります。損得を考えない愛のある行動は、宇宙や神様を感動させ、本人はもちろん世界全体、宇宙全体が幸せな波動でいっぱいになります。全体のためには、一人一人の小さな行動が、本当に大切です。
地球が幸せいっぱい、愛いっぱいの星になりますように、みんなで一緒に愛のある行動（思いと言葉も）をしていきましょう。
目覚めた朝に、「今日も一日、心の中が平和と平安であるように努力し、愛ある行動をする」と決心して毎日を過ごし、それを積み重ねていけば、きっと素晴らしい人生になることでしょう。
2018年 11月 鴨川美津恵