一日一生(お話)

今年も暖かな美しい春がやって来ました。皆さん、春を楽しまれていますか?

今回は、「一日一生」(酒井雄哉住職の話より)の本からお伝えしたいと思います。

酒井雄哉(さかいゆうさい)住職は、約7年かけて約4万キロを歩くなどの荒行、比叡山「千日回峰行」を2回行い、どちらも満行されました。
千日回峰行は、一日30キロ歩くことから始まり、7年目は一日84キロ歩くのです。その間には「堂入り」という九日間の「断食、断水、不眠、不臥」の修行もあり、それは最も過酷な修行と言われています。

それを成し遂げた酒井住職は、次のように言っています。

 「大変なことであっても、全体を一気にやることを考えないで、頭の中で小刻みにしていくのがいいよ。いっぺんにこんな距離を歩くのかと思うと、とても無理だと思う。細かく細かく区切って、その間を集中してやる、次のところに来たら、また集中してやる・・・っていうふうに進んで行ったら、ちゃんとできちゃうものなんだよ。・・・何でも真正面から一気にやろうとせず、少しずつやっていけば、大きなことでも必ず成し遂げることができるんだよ」

一日一日の精一杯の行動の積み重ねで、気が付くと、目指していた目標にたどり着いていたり、なりたい自分になっていたりするのだと思います。だから、今日という一日だけを頑張って生きたらいいのです。

また、次のようにも語っています。

「一日が一生だな。今日、失敗したからって、へなへなすることもない、落ち込むこともない、明日はまた新しい人生が生まれてくるじゃない。それには、今日を大切にしなかったら、明日はありませんよっていうことでもある。今が一番大切だってことだよ」

一日を一生ととらえると、次の日は前日の続きの何気ない一日ではなく、生まれたての新しい一日、新しい人生なのですね。

私は毎日朝を迎えると、真っ白いキャンバスに愛のある優しい絵を描きたいと思って、一日をスタートします。もちろん思うようにいかないこともありますが、夜になり、そして新しい朝を迎えると、私の心の中のキャンバスはリセットされ、真っ白いキャンバスに戻っています。そこにまた一日を通して、自分のイメージした絵を描いていく。それが私の「一日一生」の生き方です。

また、人は人生の終わりに、お世話になった人に「ありがとう」と言って旅立つことが多いと聞きます。一日が一生なら、私はその日に一緒に過ごす人や心の中で思う人に、「ありがとう」と言って一日を過ごし、感謝をして一日を終えたいと思うのです。

人生にはいろいろなことが起こり、胸がざわざわして不安になったり辛くなったりすることがありますが、一日頑張ったり苦しんだら、それはその日でおしまい。次の日は新しい人生です。心を新たにして、心の中の真っ白いキャンバスに、喜びに満ちた絵が描けるように行動してみませんか。そして、笑顔でわくわくする幸せな一日を積み重ねていきませんか。

                                             2019年 3月  鴨川美津恵