『ありがとさん』の言葉(お話)

新しい年の始まりです。皆様、お元気に新年をお迎えのことと思います。皆様お一人お一人のお幸せな一年を、心から願っています。

私は、お正月に萩市吉部上にある猫寺(雲林寺)にお参りして、住職と奥様の笑顔に元気を頂いて参りました。その時に、そこで購入した本の一部を紹介したいと思います。

その本の題名は、「心配しなさんな。悩みはいつか消えるもの」です。著者は「板橋興宗(こうしゅう)禅師」で、卒寿記念として90歳で2017年に出版された本です。板橋禅師は 、今は福井県越前市・御誕生寺の住職をしておられ、御誕生寺は数多くの猫が暮らしていることから「ねこでら」として親しまれています。

禅語には、「非思量」(ひしりょう)という言葉があります。一言で言えば、「考えないこと」です。「悲しい」ときは、ただ悲しみ、「苦しい」ときは、ただ苦しみ、ありのままに感じるだけで、そこに考えを持ち込まない。喜びや悲しみ、苦しみをしっかり味わうだけでいい とのことです。また、「平常心是道」(びょうじょうしんぜどう)という禅語もあります。

一般的には、「平常心」とは、どのような時でも動じない心を持つことだと思いますが、禅ではそうではなく、人間の喜怒哀楽という感情のままに感じることが、平常心ということです。その感情は、当たり前の反応なのです。

しかし、それをきっかけに起こったことについて頭の中であれやこれやと考え出すと、それが苦しみの始まりなので、心穏やかに生きるためには、「考えること」を必要以上に長引かせないことが大事です。

では、考えることをストップさせるにはどうしたらいいでしょうか?

禅師の提案はいろいろあります。たとえば、悩みがあっても規則正しい生活をする、丹田を意識してゆっくりと息をする、背筋を伸ばす、座禅をして無になりひらめきをキャッチする、掃除をする、等とありますが、私がその場で簡単にできると思ったのは、「ありがとさん」の言葉です。その言葉を言うことで、後ろ向きの思考をストップさせます。

「ありがとさん」は「有り難し」、つまり「あり得ないこと」を意味していて、起こった出来事はどんなに辛くて苦しいことでも、貴重な体験なのです。その体験によって、きっと私たちの中の愛はさらに深まります。

心の中が悩みや不安、怒りで溢れそうになった時は、明るく「ありがとさん」と言って、考えることをストップさせてはどうでしょうか

後は天にお任せです。大宇宙からの助けもあるでしょうし、時が経てば解決したりしているものです。

今年もみんなで一緒に、「ありがとう」「ありがとさん」と言って、笑顔いっぱいで毎日を過ごしていくことにしませんか。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。皆さまに愛と感謝を込めて。

2019年  1月      鴨川美津恵