「自分の内を掘れ」(お話)

皆さん、こんにちは。新しい年が始まったと思っていましたら、もう三月ですね。いかがお過ごしでしょうか。
今回から2~3回に渡り、「自省録」(マルクス・アウレリウス著)からお伝えしたいと思います。

マルクス・アウレリウスは、西暦121年生まれのローマ帝国の皇帝です。39歳から、遠征中に病で亡くなる58歳まで、皇帝としてのお役目をしっかり果たされました。しかし、彼の人生は苦難の連続でした。子供の頃から哲学の勉強が大好きで、皇帝になった後も自らを内省し、哲学が示すところを実践しようと努力をした人でした。

度重なる天災と、周囲からの外敵の侵攻の中で、自ら戦の中に身を置き、思うようにならないことだらけの現実の中で、いかに人としてより良く、より幸せに生きられるかを模索し、その考えを自分のために書き留めたものが、「自省録」です。また、彼は国民の幸せ、国を超えて地球全体、さらに宇宙全体の平和をも心に置いていました。

「お前が今いる状況ほど、哲学するために適した生活はないということが、どれだけ明らかに納得されることか。・・・
されば、お前は自分自身を単純で、善良で、汚れのない、威厳があり、虚飾のない、正義の友で、敬虔で、親切で、愛情深く、義務に対して熱心である者であるようにせよ。哲学がお前を形作ろうと欲したような人に変わらずあるように励め。
神々を敬え。人を救え。人生は短い。・・・我々を守ることができるのは何か。それはただ一つ、哲学だけだ」

私も哲学は自分を守り、そして生きる力を与えてくれるものであると思います。「幸福とは何か。幸福であるためにはどうすればいいか。この人生をどう生きればいいのか」を知ろうとするのが、哲学です。それを学ぶことにより、幸せに生きる生き方を自分なりに確立することができます。それは、何か起こった時にぶれそうな自分を正してくれて、激しい嵐の中でもびくともしない強い杭のようなものになります。

また、マルクス・アウレリウスは、次のようにも書いています。

「お前が何か外にあるもののために苦しんでいるのであれば、お前を悩ますのは、その外なるものそれ自体ではなく、それについてのお前の判断なのだ。・・・事物は魂に触れることなく、お前の外に静かにある。苦悩はお前の内なる判断からだけ生じる。・・・お前の内を掘れ。掘り続ければ、そこには常にほとばしり出ることができる善の泉がある」

私たちの中には、自分を深く掘り続ければ、そこには善の泉、神様の部分があります。それは全ての人の中にあります。そして、それは人だけではなく生きとし生けるもの、全てと繋がっています。

マルクス・アウレリウスは、宇宙の秩序である理性(ロゴス)が人間一人ひとりの中にもあり、それを持ち続けることで知性を得ることが可能であると考えました。

「自分の内を掘れ」 自分の内には、大宇宙、大自然、神様、愛と光などと繋がる善の泉があり(実はそのものです)、それは私たちが生まれた時からそこにあります。

それと繋がって生きていけば、どのような時も恐いものなしです。自分の内をしっかり見ると、ニコニコ笑顔の優しく、パワーいっぱいの神様(大宇宙パワー)に、きっと出会えると思います。出会ったら、もうこれからは一日24時間いつだって何をする時も一緒です。心強いですね。知恵やひらめきも授けてくれます。大事なことは、それを信じて、毎朝お願いして、愛と感謝の気持ちを忘れず、他者に親切にして、自分の目の前のことをベストを尽くして一日を過ごすことです。毎日寝る前に「ありがとうございました」の思いと言葉を忘れないように。

皆様のお幸せな毎日を愛を込めて祈っています。

2020年3月      鴨川美津恵