新しい原子力防災計画~初めて山口県も対象となる防災計画とサマショール~

◇原子力防災計画の見直し
福島第一原発の事故の反省として、避難区域の見直しが行われました。福島原発事故前までは原発から8~10km圏内で防災計画を立てていたのですが、このたびは30km圏まで拡大しています。山口県はこれまで原子力防災計画の範囲外だったのですが、このたびの見直しで初めて避難計画を作る必要がある場所が現れました。実際に、避難訓練も実施しています。

四国の伊方原発から30km圏内(緊急時防護措置準備区域)にかかる上関町八島

◇上関原発が建設された場合
上関原発が建設された場合、30km圏内に柳井市、光市、下松市が入ります。50km圏内には岩国市、60km圏内には防府市、70km圏内に山口市、80km圏内に宇部市が入ります。
避難計画が作成されるなら、30km圏内の市民は柳井市が約32000人、光市が約51000人、下松市が約57000人の人口を抱え、そのほかの自治体を含めると10万人以上の避難が必要かと思われます。どのように避難させるか、どこの自治体がどのくらい受け入れるかという想定も必要になります。

◇他の原発の影響
現在、山口県近辺の原発には九州の玄海原発、四国の伊方原発、島根の島根原発があります。どの原発が福島第一原発レベルの過酷事故を起こしても山口県には影響を及ぼすことと思います。
さらには、韓国のプサン近くにはコリ原発があります。韓国内で商業運転する25基のうち7基が海沿いに並んでいて、800トン以上の使用済み核燃料プールがあり、ここで何かの原因で燃料が冷却できず火災が発生した場合、日本も影響を受けます。特に冬場には風が山口県へ北西から強く吹き付けるので、汚染を受ける可能性はあります。韓国の研究者もその懸念を発表しています。

万一、山口県全体が放射能汚染で避難が必要となった時、どうすればよいでしょうか。

◇サマショール
サマショールとは、ロシア語で「自主的に帰還する人、自ら住む人」という意味で、チェルノブイリ原発事故後、居住できなくなった地域に戻って生活している人たちのことを言います。もし、私の住む場所が放射能汚染された場合、それが低線量であれば、もうどこにも避難なんてしたくありません。何度も避難先を変えるような生活は寿命を縮めてしまいます。子どもさんがおられる世帯は避難すべきだと思いますが、高齢者や中年すぎた私のような者にとっては、避難生活の方が放射能の影響より大きいように思います。「サマショール」の権利をいただき、インフラの確保さえしてもらえたら今の地に住みたいというのが本音です。

あまり想像したくないことですが、そのようなことを想定しなくてはならないのは原発が存在するからで、「原発のない将来」を考える時期ではないかと思います。

参考資料
内閣府ホームページ「新しい防災対策の重点区域」
韓国の原発銀座で惨事なら 「西日本の大半避難」の推定(朝日DISITAL)