読売新聞は、福島第一原発事故後も、原発の再稼働や新増設推進の旗を振っています。原発に積極的な新聞社が原発の新増設先送りの記事を書いているので、この3~4年の間に上関原発着工の可能性は低くなるかもしれません。
2018年2月21日(水)読売新聞
原発新増設先送りの公算
エネ計画 今春取りまとめ
世論反発 次回見直し時まで国のエネルギー基本計画の見直しに向けた議論が、今春の取りまとめに向けて佳境に入っている。原子力発電所の新設や増設の必要性にどこまで踏み込むかが最大の焦点だが、世論の反発などを踏まえ、判断を先送りする公算が大きくなっている。
低コスト
「賃上げを求められている中で、企業が低コストで製造し、利益を上げられることが重要だ。」20日開かれたエネルギー基本計画を議論する経済産業省の有識者会議で、企業経営者などから、火力発電などに比べて発電コストが安い原発の活用を求める声が上がった。
昨年8月に議論はスタートしたが、電気代の抑制と地球温暖化対策の促進を両立させるため、発電時に二酸化炭素を排出しない原発の活用が不可欠との意見が優勢だ。
経団連も昨年11月の提言で、「長期的な温暖化対策を見据えると、リプレース(原発施設内での建て替え)、新増設を政府施策に盛り込むべきだ」と要望した。
2014年に策定された現在の計画では、原発を「重要なベースロード(基幹)電源」と位置づけ、電源構成に占める原発の比率を30年度に20~30%にまで高める目標を掲げている。経産省は、目標達成には、国内30基程度を稼働させる必要があるとの見通しを示している。
しかし、再稼働だけでなく、新増設が必要との見方は電力業界を中心に強い。原発の運転期間は原則40年と決められている。30年までに40年を迎える原発が20基程度もあるためだ。
3~4年後
それでも、原発の新増設に対する判断を先送りする見通しが高まっているのは、世論の反発がなお強いためだ。福島原発事故の処理費用は現時点で約22兆円にのぼり、今も多くの住民が避難生活を強いられている現状がある。エネルギー政策を所管する経産省内では、原発の新増設が必要との声は強い。しかし、政府内では「再稼働もままならないなかで、新増設への理解は得られない」(関係者)との意見が広がっている。
こうした状況を踏まえ、政府は、新増設については、3~4年後の次回見直しまで判断を先送りする方向に傾いている。当面、既存原発の再稼働と原発の信頼回復に努める考えだ。
再生エネ
再生可能エネルギーの普及に向けても課題は多い。国は現在の計画で、30年度の再エネの発電比率を現在の15%から、22~24%にまで引き上げる目標を掲げている。
新たな計画では、原発も再エネも、発電比率の目標については、大きく変えない見通しだ。
再エネの普及を妨げている要因の一つは、電力会社の送電網にある。電力会社の空き容量が不足すると、太陽光など再エネで発電した電気を家庭などに届けられないためだ。
このため、政府は、再エネを条件付きで送電網に接続できる新制度を、新たな計画に盛り込むことを検討している。先行する欧州の例にならい、国内でも18年度から導入したい考えだ。欧米などに比べて割高な再エネの発電コストをどう下げるかという点も詰めている。
エネルギー基本計画とは
エネルギー政策基本法に基づいて政府が策定する。原子力や再生可能エネルギーなどについて、今後10~20年の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す。2003年が最初で、以降、3~4年ごとに見直している。強制力はないが、電力会社や企業などは計画に沿った事業計画などを求められる。
国内原発の現状
Q国内原発で稼働中のものは。
60基中再稼働は5基
Q、現在の国内の原子力発電所の現状は。
A、電源開発大間原発(青森県)など建設中の3基を含め、60基の原発がある。このうち、廃炉が決まっているのは17基だ。東京電力の福島第一原発1~6号機(福島県)のほか、関西電力の大飯原発1、2号機(福井県)などがある。
一方、残り43基のうち、東日本大震災以後に原子力規制委員会が設けた新たな規制基準で、安全審査に合格し、再稼働した原発は5基。九州電力川内原発1,2号機(鹿児島県)などだ。ただ、四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)に対しては、広島高裁が昨年12月、運転差し止めを命じる仮処分を決定した。このため、現在は、稼働できない状況だ。
Q、残りの原発の状況は。
A、安全審査に合格済みの原発が9基、審査中が12基、未申請が17基となっている。
安全審査に合格しても稼働していないのは、東電の柏崎刈羽原発6,7号機(新潟県)など地元自治体から再稼働への同意を得られていないほか、電力会社が独自に行う安全対策も住んでいないケースが多いためだ。また、60基の原発とは別に、中国電力は山口県上関町で、原発の新設を計画している。関電は、美浜原発(福井県)の敷地内で、老朽化している原子炉の建て替えを検討している。
Q、政府の原発の位置づけは。
A、震災後の2014年に閣議決定された第4次エネルギー基本計画では、大規模で安定した発電ができる「重要なベースロード電源」と位置付けた。政府は安全性が確認された原発を再稼働させる方針だ。
ただ、福島第一原発事故を踏まえ、原発への依存度を可能な限り引き下げるとしている。将来の原発の新設や増設を認めるかどうかも明確な見解を示していない。
福島第一原発事故では、原発から40km離れた飯舘村が全村避難を余儀なくされ、100km離れた会津美里町でも除染が行われました。
上関原発は、上関町だけの問題ではありません。南相馬市のように、原発から何の恩恵も受けていない自治体が汚染状況によって市が分断されてしまい、大きな被害を受けています。今、原発工事が止まっているときこそ、山口県民として原発の是非を良く考えておかなければならないと思います。喉元過ぎれば熱さを忘れるようなことがあっては、同じことがまた繰り返されることでしょう。