六月になり、季節は春から梅雨に近づいています。これからは、色とりどりの紫陽花が、私たちの心と体の目を楽しませてくれることでしょう。楽しみですね。
ところで、皆さん、「般若心経」を知っておられますか?ほとんどの方がご存知と思います。
私は、般若心経を唱えているリズムも言葉も耳に心地よくて、素敵なお経だなと思っていました。しかし、これまで何となくしか、内容を知りませんでした。ところが、今回、「知識ゼロからの般若心経入門」(ひろちさや著)、「般若心経」(にわぜんきゅう著)の本に出合い、もう一歩進んでその内容を知ることができましたので、お伝えしたいと思います。
ひろちさや氏は、最初の一行にお経の内容がすべて書かれていると言っています。
「観自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。・・・色即是空。・・・」
(訳)「観音様が、深い智慧の完成をなされた時に、五蘊(ごうん)が皆、空(くう)であることがわかり、一切の苦厄を克服しました。・・・あらゆる存在は空である。・・・」
(言葉の意味)
- 般若波羅蜜多(はんにゃはらみった)・・・智慧の完成(智慧とは、真理を照らし悟りを開く働きかけのこと。この世で良いとされる知恵とは違う。)
- 五蘊(ごうん)・・・「色・受・想・行・識」をまとめたもの。私たちの肉体と精神をさす。
- 照見・・・光に照らされて、ものが見える。つまり、「わかる」。
- 度す(どす)・・・仏教用語で、理解させる、納得させるの意味。ここでは、克服、と訳せる。
- 色(しき)・・・色恋ではなく、「存在」の意味。
「知識ゼロからの般若心経入門」より引用
観音様は、「深い智慧の完成」によって、あらゆる問題を解決したので、釈迦の弟子・舎利子に、「あなたも『空』を分かり、苦しみや災難を克服しなさい」と、この般若心経で教えているのです。
そこで、[空」について考えたいと思います。物自体は、ただそこにあるだけで、「色」すなわち「存在」は心のありようを超えた「空」なのです。それはそのものとしてそこにあるだけ。それが分かると、心も「空」になり、こだわりや偏見が消えていきます。
どっちだっていい、これが「色即是空」の心境です。心の中の不安、おびえ、先入観などの心のレッテルをはずすと「空」の世界が見えてきます。「空」の世界が分かると、苦しいことがなくなります。
では、「空」を理解するためには、どうしたらいいのでしょうか。「修行」は必要ですが、それは決して「苦行」ではありません。
「般若心経」が説いている修行とは、「最上級の智慧の完成」を実践すること、簡単に言えば「損得なしで生きる」ことです。
損得を考えないように生きるためには、3つの智慧を実践していく必要があります。
- 「損をする智慧」(持っているものを人にあげる「布施」を中心とした智慧。喜んで行うことがポイント)
- 「問題を解決しない智慧」(問題を解決しないでそのままにしておく智慧。明らかに観る、あきらめることで物事の本質を見いだす)
- 「世の中をよくしようとしない智慧」(世間にかかわらないで生きる智慧。権利を捨てて世間のものさしにとらわれずに生きる)
これを生きているうちに全て完成させることは難しいことですが、それを目指し続けることが「修行」とのことです。
以上が、この度、学んだ内容です。要するに、心の中にある「こうでなくては」というこだわりの自分のものさしを捨てて、「どれもこれもいいね!」という慈悲深い仏様のものさしで見ることが大切なのでしょう。私も、「空」の理解を深めながら、全てを愛と光と優しい思いで
見ることを目指したいと思います。人生は山あり谷ありですが、これからも皆様と一緒に心も足取りも軽やかに、笑顔で楽しい「修行」をしながら歩んでいけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。
最後に、私の大好きな、にわぜんきゅう氏の超訳「般若心経」を紹介します。
お釈迦さま、人生の中で最も価値のあるものは 何でしょう。
それは「心のやすらぎ」だろう。
ではどうしたら「心のやすらぎ」が 得られますか。
それは 広い心で 毎日を後悔のない様 過ごすことだね。
でも悲しい出来事や悪いことが起きたら 心のやすらぎはありません。
そうだね そんな時は、逃げず、追わず、
その場所を人生の正念場として、正しい行いをすれば
必ず道は開けますよ。では、正しいか、正しくないか どうして判断したらいいのでしょうか。
まず、自分の欲から出たものかどうか、自分に問いかけてみることだよ。
正しい事は、自分のためより、人のお役に立つことだよ。なぜ 自分より人のためにするのですか。
世のため、人のために行えば、心が何事にも変えられない、自分の喜びになります。
お金や地位、名誉など移り変わるものに執着すると 迷いの世界に入ってしまうからね。そうなんだ。自分本位にならず みんなの事を思って生きていけばいいのですね。
相手をいたわる心で 生きていれば、人をいつくしむ(慈悲の)心が生じる。
人が人をいたわる心になった時、この世は幸せに満たされた世界に変わる。
悲しみや苦しみは、分かち合えば半分になり、喜びは倍になる。そうか、それが 般若心経の教えなのか。
人間は仏様から 智慧をさずかっている。
そして、人間の心の奥には 仏様が住んでいるんだよ。
みんなが争いや愚かな行為をしないで、幸せの種まきを、身近なところからしていけば幸せな世の中がきっとくる。
欲望や執着心を捨て こだわらない心で、自由におおらかに生きることが
般若心経の教えなんだよ。いらいらするな くよくよするな ぎすぎすするな
おおらかに おおらかに
2019年 6月 鴨川美津恵