被爆マリア(松籟集Ⅱ 八月号) 言の葉随想 光りつつ電線傅う雨粒を夜明けの窓辺に飽かず見つめぬ 丘の上の家に明かりの灯り初め星空の如き長崎の夜 並びいるステンドグラスを見上げつつ浦上聖教会堂の中に進みぬ 聖書なる物語の多くが描かれしステンドグラスを目を凝らし見る 浦上の被爆マリアを見上げいて八月九日を身近に思ふ 美しくやさしき瞳を持たれしや被爆マリアの悲しきお姿 病床に眠れぬ人も見ているや真夜中に映れる登山風景 あざやかなピンクの花が咲き揃うゼラニュームの鉢に夏が光りぬ 藤本悦子